Exhibitions

社会的なメッセージを鮮やかな色彩と愛らしいフォルムに込め、独自の作品世界を構築する勝田えみ。

昨年、開催した「勝田えみ -Someone’s Whereabouts-」に引き続き、“居場所”をテーマにした展示を開催します。

自分自身やそこにある事は何も変わらないけれど、国や宗教、属する社会によって変わるその存在の意味。現代社会における物理的な「居場所」の変化と心理的な「居場所」の移り変わりをテーマにしたSomeone’s Whereabouts(誰かの居場所)からさらに視野を広げ、One’s Whereabouts(各自の居場所)では「他者の存在」にもその視線を注ぎます。

光の中で失われる姿と影により示されるその存在。
日中、圧倒的な存在感を放つ太陽と月を通すことでしか示されない夜の太陽。
自分以外の存在によって認識する事ができる自身の存在の仕方。

考察を続ける中で、勝田は善悪や明暗、光と闇、真実と嘘といった、相反するものが共存する価値観の存在に着目します。そして、各々の居場所(One’s Whereabouts)から見える風景の中に潜み表象化されないものに思いをはせます。

「各自の居場所からの景色が信用できるのか、そんな単純に分けることが出来るのか。」
勝田の心に生じた疑問に対する明瞭な回答はありません。しかし、だからこそ物事や社会を見つめ、考え続ける事の大切さを訴え続けているのかもしれません。

 

“When you look at the works and try to look at it as someone else, not as yourself, you actually learn about the way you see the world.”

Daniel Richter (b.1962 -)

 

1990年代以降のドイツ美術界を代表する作家、ダニエル・リヒターは「作品を見るとき、自分としてではなく他人として見ようとしてみなさい。そうすることで、あなたは世界の見え方を知ることができるのです。」と説きます。

自分以外の他者との関係性の中で自身の存在を模索し進む勝田の作品は、各々の居場所から見えるものと、見えぬものの存在を探るきっかけとなると同時に、不確かな現在を乗り越えていく力を私たちに与えてくれます。

Art Fair Tokyo 2023「勝田えみ -One’s Whereabouts-」に寄せて
多様な時代の“ 居場所  文・大田康代

2023年03月10日(金) -  2023年03月12日(日)

【会期】
3月10日(金) 11:00-19:00
3月11日(土) 11:00-19:00
3月12日(日) 11:00-16:00

【会場】
東京国際フォーラム・ホールE(東京都千代田区丸の内 3-5-1)
靖山画廊ブース:N015