これまで「鳥の視点」シリーズで、様々な風景を俯瞰した作品を制作してきた杉浦だが、今作は近年手掛けている哀愁とユーモアを感じさせる動物の着ぐるみをモチーフとしたシリーズの一つだ。
ここで表現されているのは「横縞」と「邪」をかけた言葉遊び…
そう、駄洒落である。
今作の言葉遊び、つまり「ヨコシマ」という音が複数の意味の重なりを持つことは、一つの芸術の特性の表出であるとも考えられる。
優れた芸術作品が与えるイメージは、鑑賞者に複数の意味を同時に浮かび上がらせ、その意味の重なりや奥行きを体験させる。言葉遊びはそれを最も直感的に表した形式とも言えるだろう。
しかし、これは取って付けたような話で、今作の魅力はそんなところにはない。むしろ、肩肘張らない脱力感と、味わい深い表情がこの作品の面白さの本質だと感じる。
茶道の世界には「さびたるはよし、さびさせたるは悪しき」という名言があるが、今作も無駄な力の抜けた自然体であり、非作為的だからこそ生まれる豊かさを持っているように感じられる。
この文脈で考えると理屈をこねくり回したこの文章は「悪しき」でしかない。
ナンセンスな思考を鼻で笑う強さを持ったユーモアを、存分に楽しんで頂きたい。
「ヨコシマ」
2023年
h58.3×w12.3×d11.7 cm
木彫(朴の木)、彩色
動物学では背骨に対して平行は縦、垂直は横とするためシマウマは「ヨコシマ」な模様です。
着ぐるみバイトのおじさんは「ヨコシマ」な考えを思いついた模様です。