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プロテニス選手を志し欧州へ海外留学を果たすものの怪我により断念し、現代美術の道へ進んだ金井聡一郎。
今展ではキャンバスに自然素材である蜜蝋や土、麻袋を用いたミクストメディア作品を発表します。画面上だけでなく壁や床、展示空間に意図的に生み出された影。
しかしそれは単なる光の副産物にとどまらず、色や形として観察者の視点に応じて変化を生み出します。金井の作品と作品に彩られた空間をぜひご高覧ください。

「Orbital」
2025年
h73.3×w105×d9 cm
蝋、顔料、土、鉄、銅

 

「時間と対話の存在」〜夜露が大地を動かす、壁を軽くし、そして人類を多孔質にして〜

本作は、異なる素材同士の対話を通じて「時間の概念」と「内と外の関係性」を探る試みです。
土、蜜蝋、銅管といった異質な素材は、それぞれが異なる経年変化を遂げながら、時間の流れを視覚的に表現します。
蜜蝋は数ヶ月から数年かけてゆっくりと変色し、銅管は数日から数週間で酸化して錆が生じるように、どちらも空気中の酸素と反応しながら環境との関係性を作品に刻み込んでいきます。
ここで銅管は単なる境界線ではなく、「内」と「外」をつなぐ媒介として機能し、時間の流れの中で光と影のバランスにも影響を与えます。
太陽の動きを想起させるように設置された照明によって、作品に落ちる影の形や密度が変化します。
この動的な光の変化は、素材が経年とともに変容する現象と響き合い、視覚的な空間そのものを変えていきます。

こうして、「有機物(蜜蝋)」「無機物(銅)」「生物(人間)」が持つ異なる時間の流れが浮かび上がり、観る者に時間の多層的な在り方を意識させます。
一般的な絵画は、時間の経過による変化が少なく、長く保存されることで「不変性」を持ちますが、本作は、むしろ時間と共に変化し続ける「可変性」を内包しています。
酸化や変色といった現象は、作品が単なる静的なオブジェではなく、環境と関わりながら時間を記録し続ける存在であることを示唆します。

物質の寿命が異なることで生まれる「時間の層」を視覚化し、時間そのものを造形要素として組み込むことで、人間が感じる時間の流れとのズレを浮かび上がらせます。

2025年03月21日(金) -  2025年04月03日(木)

11:00~17:00
※土曜は完全予約制となります。
※日・祝休み

〒104-0061 東京都中央区銀座5-14-16 銀座アビタシオン2階
Tel:03-3546-7356
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