Exhibitions

私たちが何かを純粋に見るということは難しいことが多々あるかと思います。
知識や経験、価値観や思い込みによって出来たフィルターを通して、「ものの視え方」は人によって変容するからです。石原葉の作品はそんなフィルターを通して見た世界を表現しているのです。鑑賞者は二重に眼鏡を掛けたように、ぼやけた視界に戸惑うでしょう。しかし、その体験は誰もの視界にフィルターが存在することの再認識に繋がります。

■作家ステイトメント
「Who」
私たちが《誰か》と出会うのは、思いの外、難しい。
誰か、とは代替不可能なその人そのもので、
大戦下を生きたハンナ・アーレントはそれを《who=誰か》と呼びました。
属性でもなく、思い込みでもなく、日常の裂け目に一瞬現れる、掛替えのない誰か。
それは、彼らを見つめる私たちの視線が見なし、気づき、出会うものなのでしょう。
その姿を捉えたくて、描き続けています。

■お客様へのコメント
この度は、「石原葉個展 Who」をご高覧頂き有難うございます。
今、世界中が目に見えない不安に包まれています。
人と出会うこと、触れ合うことが難しく、私たちのコミニュケーションの形も徐々に変容せざるえない状況の中、絵画もまた、観賞の場をどのように展開していくのかという問題に直面することとなりました。展示という場が作品と人とが出会う場所であるだけでなく、人と人とが出会う場所であったことを、これほどまでに知らしめられたことはありません。
今回、私の個展を靖山画廊さんのご協力のもと、オンラインで展開していただくことになりました。画材の持つ物質感や、筆致がどれほどまでに伝わるかは分かりませんが、一方で、物理的な距離を超えて作品を知っていただく良い機会であるとも考えています。
掛替えのない《誰か=who》、は、見つめる私たちが出会うものなだけでなく、私たち自身も誰かから《誰か=who》とみなされる、営みのようなものなのではないでしょうか。なのでどうか、皆さまもご自愛いただければと思います。

■作品コンセプト
私にとって作品を描くプロセスはとても大事なものです。一度描いた人物や風景を、や
すりや薬剤を使って削ったり変容させていったりする。それは、私たちの思い込みや先入観といった無自覚な視線が、見ている対象を変容させていってしまうこと、摩耗させていくことを表しています。対象を知れば知るほどに、私たちは「わかっている」と思い込んでしまいますが、その思い込みに目を向けることで、他者について考えることが出来ないかと考えているからです。

Who シリーズ
《who=誰か》とは哲学者のハンナ・アーレントが、属性で見做される存在である《what=何か》と対比させて名付けた掛替えのない存在のことです。情報過多の現代において、私たちはとっくに情報を処理することが出来ず、人々やモノを分かりやすくカテゴライズして生活をしています。しかし今一度、絵画を通して考えることが出来ないでしょうか。絵画というユニークピースは、掛替えのない瞬間を、そのような瞬間として留めることが出来ないか、そう考え、人物を中心としたシリーズとして展開しています。

Note to self シリーズ
私にとって、描く行為は留める行為です。備忘録という名の通り、あまりに些末で忘れてしまいそうなものを描いています。

無効信号 シリーズ
目の前の人が怪我をすると、自分が傷ついていないのに痛みを感じることがあります。それはミラーニューロンという機能のせいで、一方、その痛みを忘れるための「無効信号」という機能も持ち合わせています。どうやら私たちは他者と時に繋がり、時に切り離すことが出来るようです。そこで繋がりや切断を引き起こすのはシチュエーションにあるのではないかと考え、描いた作品群です。

veil of ignorance シリーズ
《veil of ignorance》とはジョン・ロールズの思考実験を基に構想したシリーズです。正義のルールを決める際に皆が無知のベールを被れば、自身が弱者であることを想定し、ルールを決めるだろうというロールズの考えに対し、果たして現代において共通した弱者像は成立するのだろうかと問いをたてました。ここに描かれる人々は、それを見る人々によって何者かに、たらしめられている人々です。

2020年05月11日(月) -  2020年05月22日(金)

ギャラリースペースでの展示中止に伴い、Facebookアルバムページ及び弊社Webサイトにて出品作品を展示販売いたします!
※画像では見えづらい部分もございますので、実物をご覧になりたい方はお問い合わせ下さい。

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